【糸島】ドクター古藤の園芸塾Vol.22

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「トマト」の押さえどころ

さあさあ、春の野菜苗の植え付けも後半戦。ナスやピーマン、オクラなど高温を好む野菜苗は植え込みスタンバイってところですか。そんな春夏野菜の中でも、人気ナンバーワンなのがトマト。今が定植ピーク。その中でも特に栽培しやすい「中玉」「ミニトマト」はお子様にも大人気。


 ところが「トマトの茎葉は太うなったばってん、実のいっちょんならん」「中玉トマトのくさ、先端(お尻)が腐って、食べられんかった」などの相談も多く受けます。

トマトの尻腐れ


 何が原因なのでしょうか。押さえどころはどこか考えてみます。
 ▼植え込み苗の基準としては、本葉が7~8枚あり1段花房がつぼみ~咲き始めの苗を植えること。植え込み時期のピークを過ぎた苗は根が老化しており、樹が弱く果実の肥大が悪くなります。若苗だと肥料を吸収しすぎるため、花落ちや尻腐れの症状を引き起こします。
 ▼追肥のタイミングは3段目が開花した頃が目安です。基肥を入れた後、追肥のタイミングが早すぎると茎葉の繁りを助けてしまい、実がつきにくくなります。

追肥のタイミング


 ここで技。追肥のタイミングが分からない場合は、試し水としてやや多めの灌水をしてみます。2日後に草勢に変化がなく強くなっていなければ、急いで追肥を与える必要があります。


 もう一つ、生育環境が分かるポイントがあります。茎の太さが1~1・2センチ、先端の葉はお皿を伏せた程度の曲がり具合で、葉色が濃く、毛も良く伸び、みずみずしく感じられれば、環境は良好といえます。
 ▼定植して2~3段開花までは、吸肥力が一番強い時期なので、定植後は灌水を控えること。
 ▼次の追肥タイミングは、5段開花頃が草勢の弱くなる時期なので、2回目の追肥を与えます。
 ▼中玉や大玉トマトには、先端部が黒く腐れる「尻腐れ症」がよく発生しますが、これはカルシウム欠乏という生育障害です。しかし、肥料を与え過ぎたり、極端に灌水を控えたりすることでも発生します。一般的には追肥を与えるとき、一緒に吸収効率のよいカルシウム専用肥料「畑のカルシウム」を与えることで、回避できます。せっかくの楽しみを無駄にしたくないので、ぜひ、カルシウム成分の追肥を行ってください。

カルシウム欠乏のメカニズム


 トマトは非常に生命力が強い野菜の一つだと思っています。少ない肥料や水分でもしっかり生きていく力を持っていますし、特異な病虫害に遭わないかぎり、しっかり育っていきます。なので、大切に育てる気持ちは理解しますが、肥料や水の与え過ぎがトマトの場合、病気に弱くなったり、早く実が腐れたりなど、逆行した生育になってしまっているようです。


 心持ち栄養の付加を抑えるよう心がけることが美味しいトマトの収穫へとつながるといえます。
 (JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

古藤俊二さん
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この記事を書いた人

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