失敗しない苗の定植

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【ドクター古藤の園芸塾】 21

 4月20日は農業暦の「穀雨」。朝晩の寒暖差が緩み、日照条件も安定し「トマトやキュウリなどの野菜苗の定植はまさに適期ですよ」と、先人が伝えてくれる大切な時期です。
 昔から「畑に苗を植えるたぁ~、穀雨からたい」。ベテランのおじさんたちは自信満々。確かにその通りで、苗も質、物量とも、最も安定しています。
 一方、こんな声も。「ちゃ~んと穀雨に苗植えたとばってん、な~んか育ちのしっくりこん」「りっぱな苗ば植えたとばってん、こんも~(小さく)なった」など。生育温度や日照量、降水量など諸条件も生育に影響しますが、案外多いのが苗の植え込み時の根痛み。
 生育温度などが安定したハウス育ちの苗を畑に植えると、一定期間根の動きが弱まります。ましてや、冷たい雨風や夜温の冷え込みはなおさらです。根の動きが衰え始めることで、枯れはしませんが、先ほどの声のように「育ちがしっくりこない」「動きが感じられず、じっとしている」なんてことが多いようです。


 そこで、私が推奨しているのが「苗液体肥料ドブ漬定植」。作業はいたって簡単。定植前にまずバケツと液体肥料を用意。お薦めは有機液肥「エコアース」、さらに生育向上レベルが高いのが、糸島のプロの生産者がよく使う腐植酸発根液「ストラクチャー」。

JA糸島オリジナル有機液肥「エコアース」
プロも認める腐植酸発根液「ストラクチャー」


 使い方は、有機液肥「エコアース」の場合だと、例えば、水6リットルの場合は、エコアース20ミリ(容器キャップ2杯と半分)を入れ希釈。植え込みの苗をポリポットから抜かずに、ジャブっとしっかり根を漬け込み、液体肥料が染み込んだ苗を畑に植えこみます。植え痛みの保護と苗の活着が高まることで、一週間もすると、生育に違いができてきます。
 漬け終わった液は、廃棄せず、その他の野菜や草花の栄養補給として、与えるとよいでしょう。
 液体肥料の長所は水に溶け込んだ養分が直接に根に吸収されるところです。逆に固形肥料は、水分などにより溶け出さないと、その効果は発現しません。なので、畑に肥料を入れておいたからといって、根の保護もするわけではありませんね。

苗を薄めた液体肥料にたっぷり染み込みさせ定植
液体肥料を含んだ苗の定植
液体肥料を含ませた野菜の生育は格段に向上する


 比較的安価な液体肥料を使いこなすことは、強い植物管理へとつながります。この作業は、野菜苗だけでなく、草花や果樹、庭木類の植え込み時やマンションの方でしたら、観葉植物の植替えなどにもご利用でき、植物を選ばないのが利点です。


 野菜栽培の極意の一つに、苗半作ということわざがあります。良質な苗を植えることで、その野菜の収量や品質に影響することを表しています。良質な苗を植え痛みで犠牲にしてしまうのはとてももったいないことです。
 「苗液体肥料ドブ漬定植」という、簡単なひと手間で、栽培技術が向上します。病気やストレスに負けない生育を促すためにも、ぜひ行ってみてください。その違いは、感じられると確信しております。その他、裏技は後々で。


(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年4月21日

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この記事を書いた人

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