野菜のメタボに注意を
私の年齢にもなると、自分では超元気だと思いつつ、どこか体に衰えがあるものです。大事にならないよう若干のお薬の処方と健診を兼ね、定期的に病院に通っています。受診の際、先生に仕事柄、全国で講演や農業研究を行っているため、ご当地ならではの郷土料理など、どうしても我慢できず、食べ過ぎていることを打ち明けたことがあります。
先生から「古藤さん、だめよ。食欲があるのは大事だけど、メタボリックになると、いろんな成人病の引き金になってしまうから、用心しておきなさい」「運動もしようとね」と言われ、私はこう答えました。「時間のある時は率先して、研究農場で汗流しています」。先生は「いやいや、仕事と運動を一緒にしたらいかん」「一定の速度で歩いたりして、有酸素運動せんと」。いやいや、ご指摘の通りです。自分の体は、自分でしか守れませんからね。
そんな中、先生は、この連載「園芸塾」のファンということで、診察の合間に、園芸の話で盛り上がりました。特に樹木の手入れや植物の深掘りについて、短い時間ですが、楽しくお話をさせていただいています。
自分の体と、野菜の生育や管理を併せてみると、けっこう共通するところがあります。まずは、メタボリック。野菜栽培でも、肥料などの栄誉の与え過ぎは、決して良い生育にはなりません。例えば、トマト。栄養過剰になると、葉や茎が硬く、繁りも旺盛となり、肝心の花も着きにくくなり、実着きも悪く、栄養が偏ってしまい、葉が内側に湾曲してしまいます。一般に言う肥料を与え過ぎた「かわいがり症候群」。

ホウレンソウの場合、菜園に油かすや鶏ふんなどの比較的、長くゆっくり効く肥料を入れ過ぎると、葉は大きく成長しますが、葉色は濃い緑色となり、ゆでてもえぐみが強いため、ホウレンソウのうまみが乏しく、おいしさが失われます。
人気野菜のサツマイモ。土壌に肥料を入れなくても、前作でキャベツやブロッコリーなどにたくさんの肥料を施して栽培した後、サツマイモを植え込むと、土壌の残肥を貪欲に吸収し、ツルばかり繁り、土の中のイモが細くヒゲ根ばかりになる「つるボケ」となってしまいます。サツマイモにとっては、土の影響によるメタボと言えます。

次に「運動」。えっ? 野菜に運動? 何かピント来ませんね。実は「接触形態形成」と言い、生育過程の野菜を揺すったり、先端部の生長点を軽く触ったりすると、野菜本体が軽いストレスに負けまいと、「背丈を抑え、茎を太く丈夫にする」効果(接触刺激)があります。過度な刺激は成長を遅らせることもありますが、防御反応が強化されることで、虫や病原菌に対する抵抗力が向上します。よってストレスに強い植物になります。植物ホルモンの変化によるものなど科学的に証明されている現象です。
これからの野菜栽培は、高温乾燥などによって厳しくなる生育環境の中で、しっかりと成長させなければなりません。必要最小限の肥料を糧にし、適度な接触刺激(運動)を与え、しっかりとした体力をつくり上げることが求められるでしょう。
私も病院の先生の指導の下、食を大切にし、適度な運動を取り入れ、健康な体を維持するとともに、作物の健康的な生育や環境づくりを追求し、皆様に有益な情報を与えられるよう努めたいと思います。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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