しっとりと雨に濡れ、みずみずしく輝く植物が心を和ませてくれる。草木が潤わされる光景は、梅雨を迎えるにあたっての楽しみの一つ。木々の青葉が力強く深い緑へと変わる頃合いであることから「青梅雨(あおつゆ)」という美しい季語があり、その雨は「翠雨(すいう)」「青葉雨」と呼ばれる。雨降りのとき、こんな言葉の情景を思い浮かべると、鬱々(うつうつ)となりそうな気分が晴れてくる▼梅雨という言葉の由来を調べると、風情ある言葉を使うことで、長雨のイメージをがらりと変えようとした先人たちの思いが伝わってくる。梅雨という言葉は平安時代、中国から伝わって来たとされる。当時の読み方は「つゆ」ではなく、音読みの「ばいう」。梅雨前線は、日本列島から中国南方にかけて伸び、梅雨の季節は中国にもある▼中国の人たちは、この雨をどう呼んだのか。実は、黴(かび)の生えやすい季節であるため、「黴雨」と表現していた。現代中国語では「メイユー」と発音されるそうだ。しかし、黴の雨では印象が悪い。この時期は日本と同様、中国でも梅が熟す頃。そこで、黴と同じ読みの梅の字をあてて「梅雨」と記すようになったとの説がある▼ならば、その「ばいう」が、日本では、どうして「つゆ」という読み方もされているのか。「つゆ」と読まれるようになったのは室町時代からとされる。梅の実が熟してつぶれる時期であることから「潰(つ)ゆ」に由来するとの説があるが、どうもしっくりこない。草木の葉の水滴から「露」を連想したという説もある。どうも、こちらのほうが恵みの雨を慈しむ日本人の感性には合っていると思う▼しとしとと降る雨の描写が印象的なアニメーション映画がある。宮崎駿監督の「となりのトトロ」。主人公の幼い姉妹が日の暮れたバス停で、純粋な心を持つ子どもにしか見えない森の精霊のトトロと出会う。雨の中、傘を持たないトトロに、姉が傘を貸してあげた後、トトロはどんな反応を見せたのか。雨音を素直に楽しみ、自然現象を純心で無邪気に受け止める姿がかわいらしかった。梅雨は、感性が研ぎ澄まされる季節だ。
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