春どりダイコン、種まきどきは今
春と違い、タマネギ苗以外に植える作物が少ないこの時季。年明けには、ニンジンやゴボウ、春バレイショなどの仕込みがスタートしますが、「畑が少~し空いとうけん、何か植えるとのなかですな」と産直出荷者のご相談。
暖冬傾向とはいえ、「何でもよかですばい」とは言えません。そこで、一押しが2~4月にかけて収穫する春どりダイコン。これから最盛期を迎える秋まきダイコンの流通が減る春頃に食べる、冬の寒さを耐え抜いた春どりダイコンは格別のおいしさ。秋作に比べ、生育は緩慢ですが、病虫害の発生もほとんどないし、ビタミンAやC、カルシウムなどがたっぷり詰まった葉を食べられるという利点もあります。
しかし、春どりダイコン栽培には、いくつかの注意点があります。
まずは品種。種を求める際、種袋に「春」「桜」などの春の名称を使った品種、または「とう立ちしにくい」と表記がある品種を選ぶこと。とう立ちしてしまうと、肝心な根は伸びず葉ばかり太り、花が咲いて、ダイコンそのものが収穫できなくなってしまいます。
私の一押しは「春神楽」「桜の砦」「春いずみ」「まんてん」など。いずれも肉質はきめ細かく、葉の色が濃く、小葉で葉数が少なく、密植も可能です。
収穫は通常の秋まきは、種まき後60日前後で収穫できますが、春どりは90日~120日かけ、ゆっくりと生育します。順調なら長さ35センチ、直径8センチ、重さ1・2キロ程度に太ります。
次がポイント。寒い時季なので、栽培時には一工夫必要です。一般的に、春どりダイコンは、4度前後の平均気温に連続20日程度遭遇した場合(低温遭遇)とう立ちするといわれています。よって、マルチフィルムの中で、最も地温上昇効果が高い透明マルチと不織布を使用。地温や生育温度を確保して、とう立ちを回避します。
では栽培法。根物ダイコンですから、畑は石ころなどを取り除き、なるべく深く耕します。
基肥は一坪(3・3平方メートル)当たり、糸島よか堆肥くん7キロ▽カキ殻石灰350グラム▽追肥を必要としない基肥一発肥料300グラムをよく混ぜ、幅60センチ、高さ約20センチの畝をたてます。
そこに透明マルチをかぶせたら、直径5センチ程度の穴を株間25センチで2列空けます。害虫など少ない時季なので、1カ所に3粒ずつ種をまいて軽く覆土したら、種と土が密着し、土の水分が種に移行して発芽率が向上するよう、手のひらで鎮圧。その上から、畝に不織布「パスライト」をべた掛けします。
土の乾燥状態が続くと、さすがにダイコンとはいえ、発芽が安定しません。芽が出るまでは、不織布の上から水を与えます。その後もかぶせたままにしておいてもOKです。間引きをしながら、1本に仕立てます。
年明け1~2月の低温期中に、急な春の陽気が連続して続くと、ダイコンが太らないまま葉が大きくなり、芯から花茎が伸びてくることがあります。収穫が遅れると、す(小さな空洞)が入って品質が落ちるため、この時季は畑に行ったら定期的に葉の真上から中心部をのぞき込んでチェック。芯の部分に小さなつぼみを発見したら、とう立ちのサインなので、早めの収穫をしてください。
ダイコンは我々日本人が最も消費する野菜であり、神社の奉納野菜として欠かせない存在です。大地の恵みと日本の文化をいただける身近で大切な野菜。一味違ったダイコンを楽しみましょう。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
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