野鳥録音家の田中良介さんが執筆した連載「糸島の野鳥だより」が先週号で最終回を迎えた。糸島に生息したり、立ち寄ったりする野鳥を優しく見つめ、その鳴き声を紹介する文章にいつもいやされた。野鳥愛好家の國友靖彦さんには生命力あふれる鳥たちの写真を提供していただいた。お二人に心より感謝申し上げます▼田中さんとは、知人を通じ知り合った。田中さんはボランティア仲間と一緒に2002年から20年まで計19回、野鳥の声をCDなどに収め、全国の視覚障がい者に配布した。最終号を送り出した後、お礼の言葉と共に「せっかくの宝物。もっと生かして」などと惜しむ声が寄せられるようになった。その思いに応え、田中さんはベスト録音集を作成。この話を知人から伝え知り、福岡市在住の田中さんを取材した▼田中さんは、もともと朗読ボランティアをしていた。活動を通して親しくなった視覚障がい者から自宅庭で鳴いていた鳥の名を尋ねられたのが録音を始めたきっかけ。視覚障がい者が自然の中に出て鳥の声を聞く機会はなかなかない。ならば、録音を届けて心地よさを感じてもらおうー。こう思い立ち、田中さんは福岡や糸島の里山をはじめ、韓国、台湾にも出かけ、さまざまな鳥の声を収録した▼CDの配布は、視覚障がい者用パソコンを学んだ人たちのメールのやりとりで知られるようになり、リスナーは約400人に。「拝聴しているうちに、口に出せない悩み事も、そっと吐き出させてくれるんです」。CDを心のよりどころにしているというメールが数多く届いた▼田中さんが録音した野鳥の声は糸島新聞ホームページの「自然」コーナーで聞くことができる。その鳴き声には、里山保全を訴える田中さんの思いも込められている。
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