コラム まち角

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 「『何もしない』をしているんだよ」。ディズニーのアニメでおなじみの「くまのプーさん」が口にする懐かしいセリフがふと浮かんできて、心がすーっと晴れ渡った。健康診断を受けた病院の待合室でのこと▼検査を待つ間、近くにテレビはなく、手元に暇つぶしのツールのスマホもない。それが幸いした。壁掛けの時計を見上げ、気分転換に息を吐いたとき、プーさんの純朴なほほ笑みとゆったりとした声が頭をよぎった▼待合室では最初、1分がたつのでさえ、長く感じられた。無駄に過ごしているという気持ちでいっぱいだった。やることがないまま、頭に思い浮かんでくるのは、たまりにたまった仕事のことばかり。「あれとあれを書き終えておかないと、今日は帰れないぞ」「来週出さないといけない書類を仕上げておかなくちゃ」。頭の中が「生産性」という考えに支配され、落ち着いていられなかった▼ただ、こうして待つしかないなら、それを受け入れるしかないではないか。「何もしない」と割り切った瞬間、かつて感動したプーさんの映画の名言が、より意味深くよみがえった。「『何もしない』は最高の何かにつながるんだよ」▼「何もしない」とは、実は自分自身と向き合う時間をつくっていることではないかと思う。おとなになって社会に出ると、あまりの忙しさに、自分を見失い、本当の幸せとは何か分からなくなってしまう。多忙の中でも、自分自身を、そして家族を大切にする時間をちゃんとつくっていますか。たまには頭の中を空っぽにする。おとなには必要な心の健康診断だ。

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