【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.86(8/30号掲載)

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夏の農作業の敵

 私も含め、近年の農作業を難しくしているのが、異常な高温と雑草の生育スピードの速さ。稲を栽培していると畦畔(けいはん)や河川の土手などの「草刈り」作業は欠かせません。

 昔の夏は、今のように35度を超えるような気温は、まれであったように思いますし、多少頑張っても、ちょっとした休憩中に爽やかな風が吹くと、癒されていましたね。

 お盆中のニュースで、兵庫県洲本市で、53歳の会社員が川の草刈りのため午後から1人で出掛けていき、父親が様子を見に行ったところ、川ののり面に倒れているのが見つかり、その場でお亡くなりになったそうです。原因は熱中症かもしれないとのこと。

 会社勤めを兼ねた私たちは、今日はここまで草刈りを終わらさないと、また次の週しかできないからと、どうしても無理な作業をしてしまいがちです。異常な高温と自分の体力を再認識して、自己責任として作業しなければいけませんね。

 それと、夏の汗をかく作業の敵と言えば、体を襲う衛生害虫たち。アブやブユなどが、外の仕事を一生懸命している、体に近づき刺したり、かんだりして吸血します。調べてみると、アブは分類でハエの仲間になり、日本で生息している種類は100種類ほどいて、吸血する種類も10種類ほどいるそうです。

 アブはハチみたいにお尻の針で刺すのではなく、メスは産卵の時期になるとたんぱく源を求めて、大顎と小顎を使い皮膚を切り裂くように傷をつけ、出血してきた血液を吸血します。アブは昼行性で、被害に遭いやすいのは主に朝方と夕方です。

衛生害虫のアブ

 温度があるものに集まる習性があり、草刈りなど汗をかいた体温が高い体を察知して集まります。さらに人などが呼吸した際に吐き出す二酸化炭素にも反応して集まってくる傾向があり、まさに草刈りをしている私の体は、格好の標的というわけです。かまれた肩は数か所の傷があり、腕は腫れあがり、かゆみは強く、夜はなかなか眠れませんでした。

 そこで、確か「トンボのオニヤンマは、アブの天敵やった」と思い出し、手の器用な妻に相談すると、手作りオニヤンマを作ってくれました。これは試さなあいかんと思い、早朝、草刈りをしました。私の周りをたくさんの赤トンボが飛び回り、お目当てのアブも私の腕をかみ、何匹も近づくのを確認してから、私の麦わら帽子の後ろに妻の手作りオニヤンマをセットし、作業開始。

手作りオニヤンマ
手作りオニヤンマを麦わら帽子にセット

 すると、あんなに作業中の私の周りを飛び回っていた赤トンボは姿を消し、お目当てのアブも近づきません。「お、これは効果あり」と実感。妻に感謝です。

 まあ、1、2回の試験した結果なので効果の結論は出せませんし、その時の環境も影響するので一概には言い切れませんが、今後、作業時には、手作りオニヤンマを付けたり、外したりして、さらなる効果を検証したいと思います。

 自然界での営み、益虫や衛生害虫、天敵などいろんな昆虫が生態系を守っているのも事実ですので、その中から、身を守る方策、アイデアを実践していくのも私の仕事の一つかと思います。皆さんも、良いアイデアがありましたら、アドバイスお待ちしております。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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