【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.163 4/3号掲載)

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桜に有機的な春肥を

 今年の桜の花、皆さん楽しめましたか。法的には定められていませんが、さすが、日本の国花として桜は親しまれていますし、春の門出として躍動感がありますね。桜の名所や公園、学校の校庭、神社、山に目を向けてみると、あちこちで、桜の花が開花し目につきます。

 私の実家の庭に植わっている桜は、ソメイヨシノの開花の1カ月前にいち早く咲く「河津桜」。花びらの色が濃く、満開時は見ごたえのあるピンク色です。曇天の日が多い3月の寒い中でも、かれんな花はひときわ美しく、長い期間眺めることができます。花がパラパラと散り、薄緑の新芽が伸び始めてきました。気候もいよいよ春の陽気に変わってきます。

 「え、ちょっと待てよ」。懸命に美しい花を咲かせてくれたのだから、散った後は、来年の開花準備のため、ちゃんと栄養を補給してあげないといけませんね。桜は花が終わった後、夏に花芽を形成し、冬には休眠(落葉)して、翌春に花を咲かせるといったリズムで1年を過ごしています。なので、花が終わったこの時期から花芽を形成する夏まで、体力をつけてあげる必要があります。そこで、この時期の春肥。どんなタイプの肥料を与えると良いでしょうか。

花期後半の河津桜と株元周りの雑草

 一般的には、地表にまいた後、雨などで地中に溶け出し、根から吸収されるチッソ、リンサン、カリウムがそろって入っている化成肥料「8・8・8(オール8)」などが、よく利用されているようです。低成分で根を傷めにくく、あらゆる植物に利用できます。その他、油粕や鶏ふんなどの有機肥料も多いですね。

 そこで、探求。私も仕事柄、多種多様な肥料を使って、いろいろな作物の生育調査を行っています。液体タイプや緩効性化成、ぼかし、粉状、固形などタイプはさまざま。そんな中、今回は、有機的で極自然体の春肥を与えてみました。

 使ったのは、牛ふんたい肥、食べた後のかき殻の2点。桜の株元に生えた雑草を丁寧に取り除き、表面にたい肥を約10リットル(バケツ1杯程度)敷き詰めます。その上に、かき殻を割らずにそのまま置きました。

牛ふんたい肥を株元にまいた後、かき殻を置く

 期待される効果として、牛ふんに含まれる微生物群がゆっくりと時間をかけ、たい肥に含まれるワラやオガクズなどの植物繊維質と栄養分を分解し、地表面を柔らかく肥えた土に変えてくれます。さらにかき殻に豊富に含まれるカルシウムを主体に、マンガンやホウ素などの地上界に少ないミネラル類を補給してくれます。

 即効性は決してありませんが、花芽がつく夏に向けてゆっくりと桜に栄養を補給してくれると期待しています。ソメイヨシノは、花後の4月中旬頃が良いでしょう。

除草した株元

 現在は、スピードを求める時代。新幹線や高速道路。スマートフォンにパソコン、インターネット、急速冷凍や速乾。私たちの身の回りの社会、ライフサイクルは、いかに効率的でスピードに対応できる空間を作っていくのか。

 今回、真逆に、桜のゆっくりした生活(生育)リズムに合わせて、有機的素材を優しくスローペースで桜の栄養補給になるように選択してみました。ゆるやかに花芽を形成していく桜から、さまざまなことを感じとりながら、来年の春の開花を楽しみに待っておくのも、よろしいのではないでしょうか。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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