未完成だからこそ、ロマンにあふれているー。そう思っていたスペイン・バルセロナのカトリック教会の聖堂、サグラダ・ファミリアの主塔「イエスの塔」が完成した。正面入り口の「栄光のファザード」の建設を最後に残し、全体の完成は約10年後だが、最も高い塔が姿を見せたことで、最終的な完成に向けたカウントダウンが始まった▼主塔の完成式典は6月10日に催された。聖堂を設計した建築家、アントニ・ガウディの没後100年の節目。圧巻の花火が夜空を彩った式典のニュース画像を見ながら、まるで生き物の成長のように続いてきた建設がいずれ終わるのかと思うと、寂しさがこみあげてきた▼着工は1882年、主塔の完成まで144年を要した。これだけの歳月がかかった理由はいくつかある。ガウディは1926年に亡くなるが、10年後に勃発したスペイン内戦でガウディの工房にあった資料や模型の多くが焼失。後継者は残された断片的な資料を解析し、手探りで建設を進めなければならなかった▼そして、資金難。聖堂の建設費は、市民や信者からの寄付でまかなうのを前提に計画されたが、資金不足に陥って建設が中断したこともあった。ガウディ自らが寄付を集めて回ったという逸話もある▼ガウディの設計が極めて複雑なことも建設を長期化させた。「自然界に直線は存在しない」。こんな言葉を残すガウディは幼い頃、草花や昆虫などを観察し、あらゆる生き物に機能的で、美しい曲線があることを見出した。それは建築に生かされ、神が創造した自然の中にこそ、最も合理的なデザインがあるとし、直線を排除して幾何学的な曲線を徹底的に駆使した設計を行った。それは、ガウディの時間感覚にも通じる。聖堂の建設がゆっくりと進むことについて問われると、ガウディはこう語った。「私のクライアントは急いでいない」。クライアントは、神であり、自然でもあったろう。神や自然の永遠ともいえる時間軸。その中で、ガウディは何世代にもわたる建設を念頭に設計を手掛けたのかもしれない。
(糸島新聞ホームページに地域密着情報満載)

