【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》「すみ分け」による共生

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今週号の「先撮り歳時記」で取り上げられているように、来年のえとは「巳(み)」。もう少ししたら、蛇にまつわるさまざまな話題が報じられるようになるだろう。えとの置物のように、かわいらしければいいのだが、本物となると、やはり本能的に苦手だ。ただ、苦手というだけでは済まされない暮らしをしている地域がある▼30年ほど前、鹿児島県の奄美大島で新聞記者をしていた知人を訪ねたことがある。島内を車で案内してもらっていると、何かとハブの話題となった。「サトウキビ畑の近くの農家では、トイレに潜み、かみつくことだってある」「夜中は道に出てきているので、懐中電灯を持たないと危ない」。猛毒を持つ蛇への恐怖心がひしひしと伝わってきた▼ハブ撲滅の取り組み。よく知られているのがマングースの持ち込み。ハブの天敵と考えられ、奄美大島では1979年頃に放たれたとされるが、マングースはあまりハブを獲物とせず、国の特別天然記念物のアマミノクロウサギなど在来の希少な生き物に襲いかかった。こうした被害を食い止めるため、マングースは駆除され、環境省は今年9月、奄美大島でのマングース根絶を宣言した▼マングースの導入は、奄美大島の生態系を壊した。この島の在来生物は、ハブの攻撃をかわすすべを身につけ、ハブと共存して生き残ってきたという。在来の生物を襲う肉食動物が侵入しても、ハブがそれを撃退したが、マングースに関してはそれが機能しなかった。森にすむハブまで撲滅するというのは、生態系にとてつもない悪影響が出る教訓を残した▼人間とハブの関係は、どうあるべきなのだろうか。知人は「すみ分け」をキーワードにしていた。人が生活する場にハブがいると、捕獲奨励金を出してでも取り除く。一方、森の中は、ハブの生息する場であるとして、人間の暮らす領域と分けてしまう。すみ分けによって、人とハブが生き続ける。奄美大島での共存のスタイルと言えるだろう。

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