アーティスト 大川 博

2月は「雁帰月(かりかえりづき)」と呼ばれることがある。冬鳥として日本に渡来した鳥が北へと向かっていくころ。大陸の玄関口である糸島は、ナベヅルが春の近づきとともに、シベリアへと帰っていく北帰行の通り道。この季節は、言うなれば「鶴帰月」でもある。
雷山千如寺の上空を、そのツルたちが力強く羽ばたいていく。この地は、いにしえに「雷山三百坊」と呼ばれるほどの繁栄期があり、修行僧が悟りを開かんと修行をしていたという。現在の同寺には、その頃の修行僧を彷彿(ほうふつ)とさせる五百羅漢像がある。
百八の煩悩を超越し悟りをひらかんとする修行する羅漢たち。仏の高弟である羅漢たちは、それぞれが個性豊かな表情、しぐさをしていて、こうあるべきではなく、最終的にはそれぞれに備わっている仏性を発揮する形をとっている。
羅漢たちの祈りに応じて雷山千如寺の御本尊である「千手観音菩薩」が顕現する姿を描いた。千の手と千の慈眼をもって人々の悩みを救うとされる。糸島の人々の願いをかなえていただいている菩薩である。
(アーティスト・大川博)
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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