「磯焼け」紹介
糸島漁協芥屋支所の壮青年部(吉田悠部長)が5月23、24日の両日、福岡市天神の岩田屋で、畜養した糸島産のウニの販売イベントを行った。

「糸島で育てたウニです!」。売り子として立った壮青年部のメンバーが元気に声を上げると、足を止めた客が興味津々で売り場に集まった。用意したパネルでは、近年問題になっている「磯焼け」について紹介。魚類のすみかとなる「藻場」がまるで砂漠のように消失してしまう現象で、原因の一つが環境変化によるウニの異常繁殖。海藻が食べ尽くされ、身入りの悪いウニが大量に生息するようになり、海の生態系にも深刻な影響を及ぼしている。その解決策として、藻場のウニを採取して畜養し、適切に管理、出荷する取り組みが注目されている。

芥屋支所の壮青年部では、他支所に続き、2年前からウニの畜養をスタート。メンバー6人で、漁港近くの海岸で採取したウニをかごに入れ、いかだにつるして育てている。週に1回、地元農家から出るブロッコリーやキャベツの外葉、ダイコン葉などの野菜の端材を受け取り、市内に本店を構える「牧のうどん」からは、出汁(だし)を取った後の昆布の提供を受ける。さらに、本業のワカメ漁で出る未利用部分も活用。「野菜で色が良くなり、昆布で味わいが増す。なんでも食べる便利屋だけど、食べる量は半端ない」と、吉田さんたちはせっせと餌を与えてきた。

今回のイベントで販売したのは約2千個。昨年12月に育て始めてから約5カ月、しっかりと身の入ったウニが育った。塩水に漬けた「塩水ウニ」262パックと、殻を半分に割った「殻付きウニ」100個は、2日間で見事に完売した。岩田屋の売り場では、客の反応や他産地の高価格帯のウニの様子が刺激になった。「品薄の時期に出荷できるよう畜養のスケジュールを工夫してみようか」と、改善点も見つかった。

「今回の取り組みは、問題解決のほんの入り口。でも、海藻養殖や素潜りなどを生業(なりわい)とする私たちにとって、磯焼けは死活問題。ウニを適正にとっていくことで、藻場も豊かになる」。自らの漁とも重なる忙しさの中、澄んだ海を前に、吉田さんたちは打てる手を模索する。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)