【糸島市】福井神楽全幕 雨のなか奉納

 糸島市二丈の福井白山神社で12日、福井神楽(市指定無形民俗文化財)が奉納された。降りしきる雨にもかかわらず、地域の人たちが見物に訪れ、無病息災や五穀豊穣、大漁祈願などを願う全24幕の神話を楽しんだ。

ダイナミックな舞で観客を魅了する「先駈神主」

 木、火、土、金、水の5人の神様が出てきて神主と問答を繰り広げる「剣の舞」。立春、立夏、立秋、立冬の前18日間を指す「土用」が決まるまでの顛末(てんまつ)を文語調の口上を交えながら展開した。神楽師の森田季久さんが「うなぎを食べる夏の土用がなじみ深いが実は土用は年に4回あり、土の神様が活動する土用の期間は土を動かさない方がいいとされてきた」など幕説明をはさんだ。

 地域の住民と共に、同市二丈のアートスペースStudio Kura(二丈松末)に滞在中の外国人アーティスト5人が神楽を興味深く見つめた。スイスから来日中のセレステ・リーエさんは「舞もお囃子(はやし)も初めて見聞きした。1カ月間糸島に滞在し、近隣を巡り創作活動をして、25、26日に展覧会をする予定だが、今日はとても創造力を刺激された」と目を輝かせた。

 福井神楽保存会の田中武敏会長は、雨除けのブルーシートに溜まる雨を処理するなどでいつもより時間は長くなったが「農業に欠かせない恵みの雨の中、最後まで奉納でき、地域の人に観てもらえて本当にありがたかった」と安どの笑みを浮かべ、舞い手の労もねぎらった。

 同保存会が結成され半世紀が過ぎ、メンバーは、中学2年生から85歳のベテランまでと多彩な顔ぶれがそろう。4月29日に志摩の井田原神社に奉納した際には、見物に来た中学3年生が同神楽に興味を持ち、後日練習にも訪れた。田中さんは「地元小中への継続的な神楽指導もあり、中高生や大学生など若手も育っている。今年も子どもたちに教えに行くのが楽しみ」と頬を緩めた。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次