ハクサイハダニ/近年被害が増え

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ハクサイダニによる被害

【ドクター古藤の園芸塾】 10

ハクサイダニによる被害

 先週ご紹介しましたハクサイのカルシウム欠乏による芯腐れ症。外見は立派なのに芯が変色し腐れる症状。続いて今回も「カツオ菜ば、ずーっと食べたかけん、大事に育てよったら、この頃葉のしけーっとなって、元気ののうなった。病気かかっとるとですな」とまたまた相談あり。
 確かに、一見すると葉が変色してあきらかに病気で痛んだような葉をしています。ところが、ここから私たちの出番。葉を顕微鏡で観察すると、肉眼では見づらい小さい赤黒い虫を発見。真冬にハクサイやコマツナなどのアブラナ科野菜、ホウレンソウ、シュンギクなどに発生し、近年増加傾向にある 「ハクサイダニ」 でした。


 多くの作物に加害し、被害葉は銀白色となり、さらに進むと枯死してしまいます。形態は、体長が0.8ミリくらいで黒色、脚は赤色と派手なため、ルーペで見るとすぐ分かります。行動はすばしっこく見つけてもすぐ隠れます。真冬に発生するので発見が遅れ、気付いた時には、葉が変色してしまっていることが多いようです。
 春から秋まで土の中で卵の状態で休眠。10月頃、卵から孵(ふ)化し、加害開始。3月以降に産卵される卵は休眠します。被害が多かったり、毎年発生したりするようでしたら、土壌中に多くの卵が残り、翌年の発生源となります。
 被害株もエサとなるだけでなく、卵が多く産み付けられているため、発見次第早期に抜き取ってください。放置したままだと、毎年増殖してしまいます。
 防除として、プロの生産者の方は所定の薬剤などで対処しますが、直売所出荷の方や家庭菜園者の方は、散布量が少ないため薬剤散布は難しい面もあります。そこで、食品成分生まれで簡単スプレータイプの防除剤を利用すると、有機的で安全に防除できます。散布剤の粘質がハクサイダニを覆い、動きと呼吸を阻害させます。


 本来、真冬にわずかに発生し、問題にもならなかった害虫ですが、近年はこのような害虫が増えてきているのも温暖化が影響してきているのでしょうか。私が幼少の頃の冬の糸島は、大雪でよく停電し、今よりも冬らしい寒さの天候だったという気がします。温暖化で四季がある日本、糸島の良さが失われてきているようです。


(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年1月27日

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この記事を書いた人

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