【声の野鳥だより】16

生息環境脅かされる国鳥/キジ

野鳥愛好家の國友靖彦さん撮影

 キジ目キジ科で、体長は雄80センチ、雌60センチ。日本の国鳥とされ、古くから愛されてきた一方、狩猟鳥としての心が痛む歴史があります。キジにまつわる悲しい伝説として「父は長柄の人柱」は有名。「ものいわじ 父は長柄の人柱 きじも鳴かずば射られざらまし」の歌をご存知の方も多いと思います。


 キジの雄はとても美しく、3~7月の繁殖期は顔の肉腫がいっそう赤くなります。体色は雄が派手な色をしているのに対し、雌は茶色と黒の複雑で地味な保護色です。小鳥のように多様なメロディーではさえずらないのですが、雄が時折出すさびた「ケーン」という声は本物の声を聞いたことがなくても、録音などを通し知っている人は多いでしょう。鳴いた後に両方の翼を高速で羽ばたかせてバタバタという音を出します。この音は「ほろ打ち」と呼ばれます。


 地域によっては何度もいなくなり、そのたびに放鳥されてきました。ただ、残念なのは放鳥の目的が狩猟の対象としてのものが多かったことです。キジにとてもよく似た鳥でコウライキジがいます。放鳥対象としてはこちらが多いかもしれません。キジとの違いは雄の首に白い輪があることです。


 里山の畑が耕作放棄されると、そこがやぶになってしまい、キジの生息を脅かす一因となります。「国鳥」が平和に暮らせる環境がいつまでも残ることが望まれます。

キジの鳴き声


 (野鳥録音家・田中良介)

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