闘病男性の詞、琵琶曲に 今宿で過ごす眞銅さん 奏者の尾方さんに依頼

「大野山幻想」の原詞を作った眞銅敬介さん
「大野山幻想」の原詞を作った眞銅敬介さん

 パーキンソン病で闘病生活をしている福岡市西区今宿の男性が、文化的に豊かな営みがあった万葉時代の太宰府の姿を思い浮かべて作った原詞に、筑前琵琶の奏者によって曲がつけられた。
 早良区の西南学院大西南コミュニティセンターで14日に開かれる演奏会で初めて披露される。男性は「病気に立ち向かう勇気を与えてくれた曲。ぜひ、鑑賞してみてください」と話している。

 男性は、パーキンソン病専門ホーム「PDハウス今宿」に入所している眞銅敬介さん(75)。
 12年前に発病し、体のバランスがうまくとれなかったり、手足が震えたりするなどの症状があり、施設で介護を受けながら暮らしている。
 眞銅さんは入所する前の5年前、筑前琵琶の会「嘉(よし)の会」を主宰する尾方蝶嘉(ちょうか)さんが福岡市で開いた演奏会に訪れた際、挑みかかってくるように、鮮烈に演奏される平家物語に魅了された。

作曲した尾方蝶嘉さん
作曲した尾方蝶嘉さん

 「病気で弱った体に、力をみなぎらせてくれた」。眞銅さんは演奏後、尾方さんにお礼の気持ちを伝え、交流が始まった。
眞銅さんは西日本新聞の元記者。福岡の歴史を文学的に後世に伝える作品を残したいと、以前から思っていた。
 自らが作詞をした作品を、より多くの人に味わってもらえるよう尾方さんに作曲を依頼、筑前琵琶で演奏される作品に仕上げてもらった。

 曲目は「大野山幻想」。眞銅さんが中学、高校時代によく散策した大宰府政庁跡周辺を題材に選び、前半は大伴旅人の妻の死に対して山上憶良が詠んだ哀悼歌、後半は元号「令和」の出典となった「梅花の宴」を取り上げている。作詞は2年前で、尾方さんは、精緻に表現された詞を自己の中に受け入れ調和のとれた曲をつけ、今年2月に完成させた。

 前半は、亡き人をしのぶ哀調を帯びた陰の曲調、後半はみやびな宴を感じさせる陽の旋律へと変わっていく。
尾方さんは「原詞の雰囲気に、琵琶が寄り添うように作曲しました」と話している。
 演奏会は「嘉の会第3回温習会」。午後1時半開演。尾方さんと一門の5人が出演する。
入場料千円。問い合わせは、尾方さん=090(9470)2588(午前10時~午後6時対応)。

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