冬至カボチャ育苗開始の適期
「猛暑、熱帯夜、夕立も降らん、扇風機の風はぬっか(冷たくない)」「朝はよう(早朝)仕事しても、いっときやん。午前10時はもう作業止めんと、熱中症になるばい。逆に夕方はいつまんでも(いつまでも)暑かけん、仕事になりまっせんばい」
そうですね。50年前の夏は、木陰にいると爽やかな風が吹いていたし、夕立が降ると、庭先が気化熱で冷えて、気持ちよかったのを覚えています。エアコンなどもそんなに普及しておらず、自然の風だけでも、夏は過ごせていました。緑ある山々もヒートアイランド化しているのでしょうね。
とは言っても、この時期になると、もう秋冬野菜の栽培準備が進みます。キャベツ、芽キャベツ、ブロッコリー、葉ボタンなどの苗作り。ニンジンの種まき、超極早生タマネギの種まき、ハクサイの育苗、秋バレイショやニンニク球の植え付けなど。暑いと言っても農園芸作業は待ったなし。] そこで、ちょっとおすすめなのが、「冬至カボチャ」栽培。最近は、カボチャの品種もいろいろと増え、初霜が感じられる11月下旬くらいの収穫目安でしたら、夏まきの今が育苗開始適期。まず品種は、栗みたいなホクホクした食感が人気の「栗系」カボチャ。甘味が強く、粉質が高いので品質の低下が遅く、収穫後の日もちが良いのが、魅力です。
まずは、種まき。7・5センチ(2・5寸)の小さめのポットに種を巻きます。この時期は地温が上がるので、直射日光は避け、比較的明るく涼しい場所で管理してください。おおむね3日前後で発芽。双葉の後、本葉2枚未満が定植適期の苗です。約10~14日くらいでしょう。
畑作りのポイントは、生育初期の気温が高く、草勢がつきやすいので、春作に比べて、基肥を抑え、草勢を落ち着かせた生育に心がけることです。でないと、葉茎ばかり繁茂となり、着果が安定しません。リン酸が比較的高い配合肥料、例えばチッソ8-リン酸10-カリ8と表記されていれば、1坪当たり300グラム与えてください。石灰肥料も1坪当たり350グラム目安の施肥がよろしいでしょう。
よく混ぜ合わせた土に、いよいよ定植です。根に活力がある本葉2枚の苗を暑さが和らぐ午後3時以降に、根鉢を崩さないように定植します。カボチャを含めたキュウリなどのウリ科野菜は、傷めた根の再生力が弱いので、根を傷めないことがポイントです。気温が高く水分が蒸散しやすい時期なので、定植後もしっかり、土壌に水分を補給してください。
その時に市販の有機液肥(エコアースジュニア)など300倍希釈目安のものなどを定植直後補給することで、根痛みの復元にも寄与します。定植後の管理などは、随時掲載いたします。冬至カボチャは日中の寒暖差もあり、甘味抜群です。
種からの育苗、定植、管理、収穫と一貫した栽培の魅力。1年で一番暑い7月下旬にまいて、冬の寒い11月の収穫。収穫の時には、あの暑い日が昔のように思えるでしょう。野菜作りには、物があふれ、便利でデジタル化している現代に、季節を体感できる素晴らしさがあります。
土と風、緑などアナログ的ですが、ゆっくりと時が進みそうです。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
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