【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.105(1/17号掲載)

ドクター古藤アイキャッチ

海外の農業情報 中国・海南島編

 年末年始の10日間、中国やベトナムの現場に出向き、農業の実態などを体感し、自己研鑽(スキルアップ向上)を行いました。土壌作りと肥料による「作物の鮮度維持の向上」「果実が持つ本来の風味獲得」「アミノ酸による生育安定」などについて調べることを目的としました。

 現代の貯蔵や輸送技術の発達の進化は、めざましく、冷凍、冷蔵に加え、鮮度保持袋、真空パックや輸送コンテナ使用時による加湿とエチレンガス除去など、産地からなるべく鮮度を落とさず、消費者に届けることができるようになりました。また、果実も品種改良が進み、糖度、品質や収量なども大幅に向上しています。

 その技術が進んだ中、よく耳にするのが、「あと最低3日くらいは鮮度を保つことができないか。店頭での劣化が早くて目立つ。切り花を長く持たせたい」など。また、「果物を食べても、確かに甘いことは甘いが、果物が持つ本来の香りが薄い。素朴な香りがしない」など。なるほど、収穫後の貯蔵、輸送ではなかなかこの問題の解決にはつながらないでしょうね。

 そこで、フルーツなど盛んに栽培されている、中国の海南島からベトナムのホーチミン、ダラットでの農園を見て回りました。

 まず海南島。九州、台湾と同じ規模の面積の島で、島全体でフルーツが生産されています。特に、中国全土で5カ所のみ指定された経済特区で、農業と観光が主産業です。

 中国のハワイともいわれ、私が訪問した12月も日中の気温が24度と快適で、たくさんの観光客でにぎわっていました。主な農作物は、ライチ、パイナップル、ドラゴンフルーツなどの果物中心。その経営規模も桁違いで、1農家当たり約300ヘクタール規模で経営されています。その他、サツマイモ、カボチャなども広大な農地で栽培されています。

広大なフルーツ畑

 まずは、持参した簡易土壌分析器を使って、土壌診断。利用されている肥料など検証。いまだ、化学肥料の使用量が多く、大規模経営に加え、生産コストを抑えるのに、水溶性の化学肥料は欠かせないようです。しかし、近年、アミノ酸系の水溶性有機肥料も利用されているようですが、生育効果の発現が化学肥料より遅いため、まだまだ認知度が低く、利用は少ないようです。

 ただし、消費者の品質本位の要望に対し、アミノ酸は果樹や果菜類の生育促進にさまざまな効果をもたらします。果実の肥大や重量の増加に役立ったり、病害抵抗性を高めたり、糖度を向上させるなどの相乗効果も大きいといえます。また、化学肥料では、難しい土壌微生物の活動を活性化することも重要といえます。

現地で研究

 島内唯一のアミノ酸製造工場を訪問し、その巨大な生産力も確認することができました。アミノ酸資材を活用した、味が濃く、フルーツ本来のうまみをもった果実栽培が、いよいよ本格的に稼働していくようです。海南島も当然、近年の気候変動(雨季と乾季のバランスの崩れ)などが、懸念されているようで、土壌再生を含み、新たな生産体系が築かれようとしています。次回は、ベトナム、特に訪問したホーチミン、ダラット地方での農業をご紹介させていただきます。

アミノ酸製造工場

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

糸島新聞ホームページに地域密着情報満載

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次