「よかまちみらいプロジェクト」5周年報告会
糸島半島を舞台に、地域が抱える交通課題の解決と魅力向上を目指す「よかまちみらいプロジェクト」が、発足から5周年を迎えた。5月21日、福岡市内で開かれた記念報告会で同プロジェクトの金子直幹代表(昭和グループ代表)は「この5年間には、コロナ禍による移動制限も経験しながら、自由に移動できる喜びを再認識できた時期でもあった」と振り返りながら、「移動サービスを通して未来につながるまちづくりを目指すという志のもとに、さまざまな仲間とともに歩んできた。これからも一致団結して、プロジェクトを盛り上げていきたい」と語った。

オンデマンドバス 路線拡大へ
「よかまちみらいプロジェクト」は、昭和グループを中心に、トヨタ自動車や行政、教育機関、地域企業などが産学官連携で参加し、2020年10月に発足。観光地として人気を集める一方、高齢化や公共交通の不足、観光渋滞など日本の地域課題の縮図のような糸島をモデル地区とし、オンデマンド(予約制乗合)バスやカーシェア、電動レンタサイクルなど多様な移動サービスの実証・導入を進めてきた。
プロジェクトの柱の一つであるオンデマンドバス「チョイソコよかまちみらい号」について、昭和自動車の今泉健吾常務執行役員は「従来の路線バスは、本数が少ないうえにバス停が遠く、運転手不足や高齢化で路線維持も難しい状況だった。さらに、利用者減による運営コストの増加が財政を圧迫し、住民からは『免許を返納したいが、車なしでは生活できない』という声が多く寄せられていた」と、地域の切実な課題を挙げ、「これらの課題を解決し、お客さまの利便性と効率化を両立できる仕組みとして、オンデマンドバスの導入に取り組んだ」と説明。
最初に取り入れた糸島市の曽根地区では、2カ月の実証実験を経て有償実験に移行。「家の近くにバス停ができてとても便利になった」「時間を気にせず外出できる」といった利用者の声がある一方、「予約が面倒」「アプリの使い方が分からない」などの新たな課題も浮かび上がったため、予約アプリの使い方の説明会などを開き「地域住民の皆さまと接点を作り、認知度の向上を目指している」と報告。
地道な取り組みの積み重ねにより、現在の停留所は400を超え、運行エリアは曽根・雷山・井原山・糸島中心部を5台でカバーし、会員数は4千人に迫るまでに成長。オンデマンドバスのノウハウは佐賀県など他エリアにも展開されており、今後は路線の拡大のほか「外に出たいと思っていただける“こと”づくりも考えたい」と語った。
防災・減災分野の取り組みについて、SEEDホールディングスの山本政典執行役員は「21年に市と災害関連協定を締結し、災害時の避難所などに非常用電源を供給できる給電対応車両の提供や、平常時の防災啓発活動に取り組んできた」と説明。
市と合同で給電車両の派遣訓練を実施し、車種ごとの給電方法の違いを踏まえ、市職員への操作レクチャーやスムーズな引き渡し手順の確認を重ね「今後も避難所運営訓練と連携し、実践的な取り組みを継続する方針だ」と報告した。
最後に月形祐二市長は「この地域を預かる者として、移動権をいかに確保できるかが最大の課題だと痛感している。過疎地域になればなるほど、高齢の方々は買い物に行くにも病院に通うにも、免許を返納して車が使えなくなれば途端に不便を強いられる。こうした課題は日本中で共通しているが、糸島はその縮図とも言える存在」と語り、よかまちみらいプロジェクトは「その解決に向けた努力を続けていただいており、これからも未来に向けて、誰もが夢を持ち、安全で安心して住み続けられる地域づくりのため、ご協力を」と、5年間にわたる多くの関係者の協力と尽力に深い感謝の意を表した。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)