【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.132(8/8号掲載)

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野菜の育苗特集 パート2

 連日の30度超えは、さすがに体にこたえます。お盆を前にして、どんなに暑くても、稲が青々育っている田んぼでは、赤トンボが「待ってました」と言わんばかりにたくさん飛んでいます。「赤トンボは、強いなぁ。反対に私は猛暑でくたくた」。ただ、朝日の中で無数のトンボの羽がキラキラと輝く風景はすばらしいですし、守り続けるべきですね。さて、前回に引き続き、野菜の育苗の紹介です。

 水稲育苗箱(縦28センチ、横58センチ、高さ2.8センチ)にセルトレーを載せます。ここでセルトレーがポイント。プロの生産者などは育苗施設を持ち、水や肥料などの管理も徹底されるので、128穴セルトレーでの育苗が主体です。

 ところが、私のような別の仕事をしながらの育苗は管理が行き届かないので、55穴の大きいセルトレーを使った方が、成功率が高くなります。128穴セルトレーの土の量はおおむね3.2リットル。一方、55穴セルトレーは約6.4リットルの土が必要です。この土の量が保水力向上や根の伸長ストレスの軽減となり、管理しやすくなりますので、55穴セルトレーはおすすめです。ただし、土のコストが高くなりますが、それ以上の生育効果は期待できます。

55穴セルトレー(左)と128穴セルトレー。おすすめは55穴セルトレー

 種まき前に、トレーに種まき培土を擦り切れいっぱい入れた後、タップリ散水し、数分間、しっかり土に水分を含ませます。消しゴム付き鉛筆サイズの棒を用意し、各セルの中心に深さ5ミリ程度のまき穴をつけます。

まき穴

 穴に、キャベツやブロッコリー、ハクサイなどの種を1粒ずつまいていきます。非常に種が小さい上、袋には少量の種しか入っていないので、丁寧にまいてください。まいた後、穴が隠れる程度の覆土をし、不織布でトレー全体を覆います。

 不織布をかぶせることで、保湿効果が高くなり、乾燥しにくくなります。または新聞紙をのせておくのも良いでしょう。

 この時期のもう一つの課題が、コナガやアオムシなどの害虫の食害が増えることです。ここは防虫効果を得るために薬剤を使うか否か、皆さんの判断にお任せいたします。

 次に、まき終えた育苗トレーの置き場が特に重要です。暗い場所だと発芽後、茎が伸びた徒長苗になってしまいます。逆に直射日光のあたる場所は、地温が高くなり、土が乾燥しやすく、管理が難しくなってしまいます。

 家の軒下や午前中は光が当たり、日差しが強まる午後は日陰になるような場所を選ぶことがポイントです。その後の管理は、土が乾きはじめたら潅水(かんすい)を行ってください。

 128穴セルトレーより、55穴セルトレーの方が、土に余裕があるため、生育が緩慢になりますが、一方、苗が伸びあがる徒長は抑えられるので、家庭菜園の方などにはおすすめです。

多少害虫の食害はあるものの、定植適期の苗(55穴セルトレー)

 「苗半作」ということわざがあります。作物の生育の良否は良い苗を定植するかが鍵です。今年の秋冬野菜、自分で種から育てた野菜の収穫によって格段と愛情が湧くと思います。ぜひチャレンジしてみてください、くれぐれも熱中症には、ご用心くださいませ。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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