春分の季節になると、糸島の広大な麦畑が随分とにぎやかになる。農道に車を止めて降り立つと、ヒバリたちのにぎやかなさえずり。「ピーチュルピーチュル」と、複雑な鳴き声が空から降り注ぐ。さえずりは、雄が雌に対して魅力をアピールする求愛行動であったり、縄張りの主張であったりするため、ヒバリはまぶしい青空に一心不乱となって浮かび、鳴き続ける▼垂直に飛び上がってから1分以上も鳴くことがあるとされるヒバリ。そのさえずりを人の言葉に置き換え、覚えやすくした「聞きなし」に、ユニークなものがある。「日一分、日一分、利取る、利取る、月二朱、月二朱」。この聞きなしには、ヒバリが太陽にお金を貸していたという民話が組み合わされている。天高く舞い上がり、借金返済の催促をしているのだという。ヒバリの名の由来は「日晴(ひはる)」との説があり、春の陽光がよく似合う▼それにしても、ヒバリの飛ぶさまは長く見続けても飽きがこない。季語では、急上昇していくのを「揚(あげ)雲雀(ひばり)」、さえずりながら高く飛び回るのを「舞(まい)雲雀(ひばり)」、そして急降下するのを「落(おち)雲雀(ひばり)」と呼ぶ。中でも、精いっぱいさえずった後、一直線に落ちてくる落雲雀は、力を出し尽くした様子が伝わってきて、物事をやり遂げたというすがすがしさを感じさせる▼ただ、ヒバリは巣に戻るとき、巣から離れた場所に降り立つ。巣がどこにあるのか、捕食者に知られないようにするためだという。それでも、捕食者に巣を見つけられた場合、親鳥は捕食者に近づき、けがをして逃げ切れないというような演技をしながら、巣から離れたところへと誘導していくという。けなげで可憐(かれん)な習性をもっている▼ヒバリはアジアやヨーロッパ、北アフリカと世界に広く分布し、親しまれている。英語名は「skylark(スカイラーク)」。この言葉は、ヒバリの特性に合わせた意味合いでも使われる。動詞では「無邪気に遊ぶ」といったニュアンスがあるのだそうだ。糸島の風土とよく調和したヒバリ。糸島のシンボルになるような鳥だと思っている。
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