糸島の冬の風物詩として定着した「カキ小屋」。いまや地元にとどまらず、全国から多くのファンを集めている。この海の恵みを生かし、地域のにぎわいづくりにつなげてきた糸島漁業協同組合カキ養殖部会の取り組みが、第31回全国青年・女性漁業者交流大会で最高賞である農林水産大臣賞を受賞した。新たな食文化の創出や雇用の拡大、観光振興につながった点が高く評価された。

糸島漁協 カキ養殖部会が農水大臣賞
全国の漁業者が日ごろの研究や実践の成果を発表する同大会は3月5、6日、東京で開催された。同部会の上野慎一郎さんが「ゼロから始めたカキ小屋経営~糸島市に新たな食文化と地域雇用を生み出すまでの軌跡~」と題して発表した。1990年代初頭、吾智(ごち)網の休漁期に「冬の副業」として始まったカキ養殖が、地域の中核産業へと成長するまでの歩みを紹介。当時は殻付きカキを焼いて食べる習慣がなく、販路拡大に苦慮する中、生産者直売の「志摩の朝市」で焼きガキの試食を提供したことが、カキ小屋誕生のきっかけとなった。
その後、自宅の軒先や掘っ立て小屋での提供へと広がり、来客の増加に伴って、炭火やガス台で客が自ら焼いて楽しむ体験型のスタイルへと発展。さらにサイドメニューやご飯ものも加わり、飲食店に近い形態へと進化し人気を集めた。掘っ立て小屋からビニールハウスへ、さらに2019年には一部の漁港で常設施設へと移行し、地域の女性や若者の雇用創出にもつながった。
カキ小屋は現在、市内4漁港で24軒にまで拡大。来店客数は12年の16万人から、19年には約4倍の59万人に増加した。コロナ禍で一時的に落ち込んだものの、事業者同士が切磋琢磨(せっさたくま)しながら経営努力を重ね、現在はコロナ前の水準まで回復している。カキ養殖の収益性向上は、若手漁業者の増加や後継者確保にもつながっている。
上野さんと梅本亮同部会長は13日、月形祐二市長を訪れ、受賞を報告。上野さんは「先人たちの努力が評価された。今後も若手漁業者が増える刺激となればうれしい」と話した。また、近年の海水温上昇にも言及し「水温の低下が1カ月ほど遅れている感覚がある。成長はやや遅いが、顕著な漁獲減には至っていない。高水温に強い品種の導入などにより通年生産を進め、工夫と対策を重ねていきたい」と今後の展望を語った。
17日には同漁協の仲西利弘組合長をはじめ関係者が服部誠太郎知事を訪問。服部知事は「ゼロから価値を生み出し、課題に挑戦して乗り越え、若手漁業者の参入という成果につなげた」と称賛し「今後も県の重要基幹産業として、ともに盛り上げていきたい」と力を込めた。
(「全国牡蠣(かき)-1グランプリ2026」の結果を4月24日付糸島新聞に掲載)
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)
