川付の川上さん方
ツツジが鮮やかに咲く山付きの庭に、どっしりとたたずむ「マーライオン」-。糸島市川付に住む溝口義昭さん(90)は、いつものように畑をトラクターで耕していた3月の午後、ふと顔を上げ、向かいの川上康さん方の庭に目をやった。「あんたとこ、マーライオンがおんなぁ!」。人の背丈ほどある庭石が、午後の柔らかな日を浴び、くぼんだ目に大きな頭-確かにマーライオンのシルエットに見える。

マーライオンは、シンガポールのシンボルで「ライオンの頭」と「魚の体」を持つ架空の生物。海に面する同国の守り神として知られ、現地では口から勢いよく水を吐き出す姿が観光の目玉となっている。
3年前にUターンしてきた川上さん。山を借景に石を配した庭を丁寧に手入れしている。敷地に隣接する巨木のバクチノキが枝を張り、この季節、庭に日が差すのは午後のみ。そのわずかな時間帯だけ、庭石に光が当たり、マーライオンのように見えるというからくり。
「ずっとここで畑をしよるのに、今まで気づかんやった」。溝口さんはキツネにつままれたような表情。「山から水ば引いて、口から出るごとしたらよかたい」と冗談を飛ばすと、川上さんも「言われてみれば、見えんこともなかね…」とにやり。
川付の集落を見守るマーライオン。今日も静かに、人々の営みを見守っている。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)
