コラム まち角

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 秋の深まりとともに、にぎやかな秋祭りの季節がやってきた。今週号で紹介した糸島市の志登神社の例大祭。日が暮れ、暗くなった鎮守の森の奥で、明かりのともされた社殿が鮮やかに浮かび上がっていた。神職の宮﨑多恵さんによる朝日舞がこの清らかな社殿の中で始まった。カメラのファインダーをのぞきながら、夢中でシャッターを切った▼構図や表情、動きと、いろんなことを気にかけながら撮影するのに、いつのまにか慣れてしまったが、このときはなぜだか無心にシャッターを押し続けた。ただただ、目と指先が自然と連動しているのが何とも心地よかった▼例大祭が終わった後、宮﨑さんに舞っているときの気持ちを尋ねた。「日々、こうして生きていられることを、神様に感謝しています。今、こうして存在していられることを感じながらです」。社殿は秋の虫たちの声に包まれていた。虫たちも、ひたすら鳴き続けることで、今を謳歌しているかのようだった▼「中今(なかいま)」という言葉がある。過去と未来の間にあるのは、今この瞬間。過去を悔やんでも後戻りはできないし、まだやって来てもいない未来をあれこれと思い悩んでいると、目の前にありもしない不安をつくり出してしまう。ただ、この瞬間を精いっぱい生きるのみ。これが中今の意味するところであろう▼未来は決して定まったものではない。瞬間瞬間をどう生きていくかで、いくらでも変わっていく。今この瞬間、自らがつくり出しているものだ。自分が存在しているのは、この瞬間だけ。言うまでもなく、大切にしたい。

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1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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