【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.110(2/28号掲載)

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この時期だからやっておくこと

 2月のこの時期は特に重要な農園芸作業が待っています。3月5日は農業暦の「啓蟄(けいちつ)」。土の中で縮こまっていた虫(蟄)が穴を開いて(啓いて)動き出す日のことです。人々が「さぁ働くぞ」と、意気込み始める日のことであるとも言えます。

 この時期は、一雨降るごとに気温が上がってゆき、春に近づいているとされています。気温が高くなると、私たちの身の回りも「あればせにぁ~いかん」「あれは、どげんなっとうとかいな」「あっちにも行かなあいかん」とせわしく(慌ただしく)動き回ります。

 フットワークがよくなるこの時期に、必ずやっておくべき農作業があります。一つは、バレイショ種の植付。バレイショ種の植付ベストは先週の「雨水」から「啓蟄」までが最適と言われています。近年、春バレイショの生育肥大期で重要な5月中旬に気温が平均より高く推移し、中には夏日を記録するほど。本来、冷涼な生育適温を好むバレイショは、高温期が長くなると、地上部の葉が一気に黄化しはじめ、光合成機能が衰え、デンプンを作れなくなり、土の中の貯蔵塊(玉の部)が肥大できません。

 過去は気温も安定していたので、急がなくてもよかったのですが、まだ種イモ植付が済んでいない方は、早めに植えこんでください。バレイショは本来、多くの肥料を必要としませんので、出芽後、株と株の間に適量の株肥を置いておくと、全体の生育が安定します。

 二つ目は、タマネギの生育管理観察と病気予防。この時期から、気温の変動、どか雨、菜種梅雨、春一番と予期せぬ天候に遭遇する可能性があります。

 現段階で青々とした葉姿で、順調良く生育していても、病害で一変する可能性があります。タマネギの大生産地佐賀県でも、今のところ2月の病害発生予報は「並」となっており、いつ多発するかは、天候次第といったところです。私の勝手な判断ですが、タマネギ病害ランキングは次の通りです。

 1位・べと病 2月頃、生育の悪い、湾曲した、色あせた生育となり、気温15度前後、日照不足で雨の多い年に多発し、4~5月にかけて曇天が続くと多発します。排水不良で多湿な圃場(ほじょう)で発生が多い傾向にあります。最重要病害。

 2位・白色疫病 早生種では、2月末から3月上旬にかけて、中晩生種では3月中下旬から4月にかけての春雨のころ発生します。

 3位・腐敗病 発生適温は人間がすごしやすい20~23度。降雨が続き土壌湿度が高い状態で激しくまん延しますが、乾燥が続く場合に病勢は停滞します。

べと病にかかったタマネギの葉(日本農薬株式会社提供)

 以下、灰色腐敗病やボトリチス葉枯症(小菌核腐敗病、灰色かび病)などが続きます。対処方法は、専門の化学処方と、治療より予防効果が高い有機処方があります。化学処方は「アミスター20フロアブル」2000倍希釈液の散布がおすすめで、有機処方は「重曹」300倍の希釈液をタップリ散布することで、一定の予防効果を発揮してくれます。

 春バレイショもタマネギも大規模生産者、直売所出荷者、家庭菜園と幅広く栽培されており、重要な作物です。4月には、JAやホームセンター、園芸店などの店頭には所狭しと、トマトやキュウリなどの春夏野菜苗が、ズラッと並びます。

 4月の苗定植を見込んだ土づくりと並行して今、やるべき作業をチェックし、手応えのある収穫の喜びへとつながるよう願っております。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

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古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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