「糸島モデル」構築目指す
糸島市の森林整備と木材の生産拡大を目指す一般社団法人「いとしまの森」の設立報告会が4月20日、市役所で開かれた。同法人は糸島市、県広域森林組合、糸島産材サプライチェーン推進協議会の3団体を社員(出資者)として同1日に設立。森林管理を一貫して担う体制を築いた。代表理事の馬場貢副市長は報告会で「林業に関わる団体が市と共に一つの組織をつくったのは、県内初の取り組み。糸島モデルを成功させ、森林整備の加速化、安定的な木材供給、担い手の育成と確保を図りたい」と語った。

市域の約48%(1万343ヘクタール)を占める森林のうち、人工林の総面積は5,843ヘクタールに及ぶ。その9割超にあたる約5,400ヘクタールが、植栽から40年以上が経過する「伐採適期」を迎えているが、現状の伐採面積は年間10ヘクタール程度にとどまっている。
豊富な森林資源を生かしきれていない背景には、二つの大きな壁がある。
一つは、山林所有者の意向確認と同意取得が難航していること。過去の意向調査では、未回答や返信なしが全体の65%に達している。整備の前提となる意向の把握自体が困難な状況で、森林整備が進まない最大の要因となっている。
もう一つは、担い手の確保と育成の停滞。
現在、市内の林業従事者は27人、林業事業者は10事業体と極めて少なく、高齢化も進行している。担い手の確保には、常に安定した仕事量と生活できる収入を保証できる環境を整えることが急務であり、地域林業を「儲かる産業」へと成長させる仕組みづくりが求められていた。
課題解決を模索する中、2013年に開設された貯木場「伊都山燦(いとさんさん)」は、年間入荷量が目標(1万2,000立方メートル)の半分程度に低迷。今年3月末をもって一時休止。今後は法人が新たな運用形態や適地を再検討し、3年後の再始動を目指して計画を練り直す方針だ。
新たに始動した法人は、当面の予算規模を年間約2,300万円とし、事務局長以下3名体制で実務を担う。行政のみが扱える個人情報を活用して所有者の意向を市が調査し、同意を得た情報を法人が引き継ぐ。法人は、これまでモザイク状に点在していた所有者の意向が取れた森林をパズルのように組み合わせ、エリアごとに集約。効率的な路網整備や大規模な森林経営計画の策定を可能にすることで施業コストを抑制し、所有者への利益還元を図る。
今後の目標として、法人は伐採面積を現在の約5倍強となる年間54ヘクタールへと引き上げる方針。50年間で伐採適期の半分(2,700ヘクタール)を更新するという長期ビジョンを掲げ、単に切るだけでなく「使う、植える」の循環型サイクルを確立。将来にわたって安定した仕事量を確保することで、若手技術者の呼び込みと定住を促進する「糸島モデル」の構築を目指す。

馬場代表理事は「森からの水が平野を潤して農産物を育て、やがて海へと流れ込んで海産物を育むが、このままでは森が荒廃しかねない状況」と危機感を募らせ、「森林管理組織である法人の立ち上げにより川上から川下まで、林業の流れをスムーズにするこの『糸島モデル』を成功させたい」と決意を語った。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)
