長く下に反ったくちばし/ホウロクシギ
チドリ目シギ科、体長61・5センチと、シギ類では最大。特徴は下向きに反った長いくちばしで、これを干潟のゴカイや小さなカニの穴に差し込んで採餌します。ホウロクの名は茶色の体色が木の実や豆をいる素焼きの焼き物「焙烙(ほうろく)」の色に似ているからと言われています。
鳴き声もとても印象深く「ホーイン」や「ホーイー」と聞こえますが、私の鳥学の先輩から、ホウロクシギは「『カーリー』と鳴いているのだ」と指導されたことがあります。それほど鳥の声は聞き手がさまざまに聞いていて、それをカタカナで書き表すことがいかに難しいかということでしょう。鳴き声も姿も大変よく似た鳥にダイシャクシギがいます。パッと見た目には同じ鳥に見えるほど両者はよく似ています。違いといえばダイシャクシギのほうの体色がやや明るいということです。
私はホウロクシギの鳴き声に魅せられて夜の干潟に入って膝まで水に漬かって夢中で録音していたことがあります。その間、どんどん潮が満ちてきて、とうとう腰の上までぬれてしまい、寒くてガタガタ震えながら夜遅く帰宅したという今では笑ってしまう思い出があります。ホウロクシギの不思議な鳴き声は、海面が上がってきているのを忘れさせるほど魅力があったということでしょう。
ホウロクシギの鳴き声
(野鳥録音家・田中良介)