4月開校 地域社会との架け橋目指す
「僕はエジプト!」「私はバングラディッシュ!」「インド!」「タイ!」「日本!」-。次々と、子どもたちが元気よく自分のルーツの国名を教えてくれた。多様な国々にルーツを持つ子どもたちには、一つの共通点がある。みんなイスラム教徒(ムスリム)なのだ。
志摩の師吉地区に今年4月、「福岡インターナショナル・イスラミック・スクール」が開校した。現在は幼児から小学5年生まで17人が通っている。子どもたちは学年ごとに分かれた教室で、英語で算数や理科、芸術、語学(英語、日本語、アラビア語)などの教科とイスラムの教えを学んでいる。
スクールを運営しているのは、イスラム教の教えに基づいて活動を行う一般社団法人、福岡伊都国際文化交流会だ。事務局長のモハメド・ハッサン・エルノビさんは、スクールの開校には二つの背景があったと言う。一つは九州大学の伊都キャンパスへの移転だ。大学には多くのムスリムの研究者や職員、留学生などがいる。今後は大学周辺に居住するムスリムの増加が予想され、その子どもたちの教育の場が必要になっていた。
もう一つは、子どもたちのムスリムとしてのアイデンティティを守ることだ。子どもたちはスクールで聖典のコーランを学ぶほか、昼食後の定刻になると、決められた方法で手や口など身体を清め、礼拝室に集まり、教師も含めた全員で西方のメッカに向かい祈りを捧げている。
このようにムスリムにとって重要な習慣や価値観を、子どもが集団で学べる場は日本全国でも数少ない。子どもたちはこのスクールで学べることを喜び、教師のハニ・モリシさんも「自分の子はもう成人したが、ずっとこんな学校を望んでいた。本当に良かった」と喜んでいる。
このスクールでは、ルールを守るならば、ムスリムでない日本の子どもも受け入れている。将来的には中学校の増設も構想中だ。また周囲の清掃をしたり、可也コミュニティセンターで交流会を開いたりするなど、地域との良好な関係づくりも重視している。エルノビさんは今後について、イスラム教の行事での交流イベントや、地域の人を対象としたアラビア語や英語の短期講座などのアイデアを練っている。「この学校はムスリムだけのものではなく、糸島の人のためにも活用したい」と述べ、スクールがムスリムと地域社会の架け橋になることを目指している。
(地域特派員・尾崎恭子)