【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》「中道」の教えとダイエット

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還暦を過ぎ、何かと無理が利かなくなり、それがむしろ幸せにつながっていると思うことがある。生活習慣病の予防で始めたダイエットもその一つ。5カ月で10キロの減量。それでも、肥満度を表す国際的な指標のBMIの適正体重と比べると、2キロも重い。若い頃に減量したときは、食事を抜いてでも適正体重を下回ろうとしたものだが、そんな努力をしようとは思わなくなった▼揚げ物と、糖質をとる量を控え気味にしてのダイエット。かつて極端な糖質制限をしていたときは、糖分の不足で四六時中、イライラしてストレスをためるばかりだった。健康的な体型に見えても、実のところは不健康な日々を過ごしていた。今思えば、適正体重に執着したことから生じたつらい体験だった▼仏教に「中道」という教えがある。極端な考え方や生き方に偏らず、バランスの取れた状態でいるというものだ。この教えは、お釈迦(しゃか)様が悟りを開く前の体験に原点があるという。お釈迦様は、煩悩の束縛から解き放たれ、自由の境地に達しようとして出家した。そして、修行をするのだが、それは死に至るような、すさまじい断食などの苦行だった。6年間の苦行で得た結論は、体を極端に痛めつけるのは、解脱への道ではないということだった▼お釈迦様は出家前、苦行とは正反対の極端な日々も過ごしていた。インドの小国の王子として生まれ、宮殿で快楽を与えられて生活したと伝わる。ぜいたくな暮らしをしても、その時だけの気晴らしでしかなく、永遠の安らぎではないと、お釈迦様は見抜いた▼苦行と快楽という二つの極端な考え方や生き方。これを捨て、偏りなく歩んでいくのが中道の教えだと思う。さて、今行っているダイエット、これからどう進めていこうか。もう少し頑張りたいとの思いもあるが、それだと、食事が楽しめなくなり、苦しみを生んでしまう。バランスのとれた努力こそが肝心。そのために断ち切っておかないといけない執念がある。「スリムになり、人からかっこよく見られたい」。体に無理を強いてしまう厄介な執念だ。

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