カンムリウミスズメを守ろう
日本近海にしか生息しない希少な鳥「カンムリウミスズメ」。玄界灘に浮かぶ孤島、糸島市の烏帽子(えぼし)島は、貴重な産卵場所の一つだ。
カンムリウミスズメを守り増やそうと、日本野鳥の会と長崎大学環境科学部の山口典之教授は2019年から烏帽子島に人工巣を設置し、保護活動と調査に取り組んでいる。
カンムリウミスズメは、頭部の冠羽が特徴で、全長24センチほどの海鳥。推定個体数は5千から1万羽程度で、国の天然記念物、国際自然保護連合(ⅠUCN)と環境省の絶滅危惧種に指定されている。繁殖期以外はほとんど海の上で過ごすため、生態については解明されていないことが多い。
カンムリウミスズメが巣を作るのは、人が来ない孤島の岩場や崖のすき間。烏帽子島には1875年に点灯し現在も稼働している灯台が設置されており、その石垣のすき間に巣が作られる。
調査チームが設置する人工巣は日本野鳥の会が開発したもので、砂を敷いた箱にカラス除けのパイプが付いている。
日本野鳥の会は、天然の巣の構造や大きさを記録し、形状や素材などを毎年改良。人工巣の前に置いたセンサーカメラの画像と合わせて、巣が使われたかどうかを確認し、さらなる改良点を検討するという試行錯誤を繰り返してきた。
今年1月、チームは人工巣を25カ所設置。今月5日に巣箱を回収したところ、四つの巣箱に卵が産まれた形跡があった。卵を産まなくても、カンムリウミスズメが巣箱に入った跡が残されたものもあった。
「巣箱を設置した1年目は入った形跡がゼロだったので、少しずつ成果は上がってきている。これからも巣の設置数を増やして、長い期間粘り強く取り組んでいきたい」と山口教授は話した。
マリンレジャーで遊びに行きゴミを処理しないと、捕食者であるカラスやネズミが増える可能性がある。カンムリウミスズメが食べられいったん数が減ると、元の数に戻るまでは何十年もかかる。巣箱があることで、致命的な数の減少を防ぐことができるという。
日本野鳥の会自然保護室室長の田尻浩伸さんは「糸島にも、カンムリウミスズメという貴重な種がいることを知ってほしい。そして海がプラスチックや化学物質などで汚れないよう普段の生活に気を配ったり、糸島の海は、実は人とカンムリウミスズメとが分かち合っているということに思いをはせたりしてもらえたら」と話していた。