【糸島市】ママライターの『糸島で見ぃつけた!』

子どもが担う地域伝統 多世代間交流で育まれ

 コロナ禍の行動制限が大きく緩和された昨年、3、4年ぶりに糸島市内各地で、地域の行事や活動が再開された。地域の伝統的な神事や祭りには、子どもの担う役割があり、慣習や所作が年長者から子どもたちへ、または先輩から年下の子へと、受け継がれている。かつて地域活動に参加した子どもが、今度は地域の役員やボランティアとともに活動を支える側で参加するケースもある。地域の行事や活動が、多世代交流の場であり、地域の中で育まれたものを次の世代へと引き継ぐ場となっている様子を、ママトコラボ取材班が取材した。

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龍国寺発祥の盆踊り

心つながる温かい音色

 一貴山校区では、毎年8月に校区全体と各行政区で盆踊りが行われている。龍国寺発祥の盆踊りが、地域住民が奏でる盆笛、太鼓と口説き(唄)に合わせて踊り継がれている。

 田中行政区で盆笛を教えるのは、学生時代にフルート、その後オーケストラでコントラバスを演奏していた久保田智子さん。2005年に移住してきてすぐに声がかかった。盆笛の音は出せたが、和楽器特有の微妙な音程の変化が難しく、音源を繰り返し聞いて徐々に慣れたという。

練習風景。左から久保田さん、優太さん、千代さん
世代を超えて交流が広がっている

 小学4年の満生優太さんは昨年の夏、初めて盆笛に挑戦した。盆踊りの1カ月前から6回ほど練習に参加したが、楽譜の半分までしか終わらなかった。自宅でも練習に励み、盆踊りの当日は最後まで吹けた。

校区盆踊りで立派な演奏を披露した

 「最初はいい音を出すためにどこに口をつけたらいいのか分からなかったけど、楽しかった。またやりたい」と意欲を見せる。

 また赤ちゃんの時から母親と一緒に盆笛の練習に参加していた小学5年生の甘蔗千代さんは、大人に交じり最後まで立派に演奏した。小さい頃から可愛がってきた千代さんに会いたくて練習に参加する高齢者もいるという。盆笛を通して多世代間の交流が広がっている。「自分がやって終わりではなく、次につながっていくということも感じてほしい。心もつながっていくといいな」と久保田さんはほほ笑んだ。 (クレマデス海上愛)

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北新地の盆踊り

未来への思い 広がる輪

 昨年8月の北新地ふれあい祭りの盆踊りで、小学6年生の大鶴周太郎さん小学2年生の池之上真輝さんがのびやかな口説き(唄)を披露し、好評を博した。

口説きを披露する大鶴周太郎さん(左)と池之上真輝さん(右)

 盆踊りには、口説き、笛、太鼓、踊りがあり、見よう見まねだけで約100年伝わってきたという。周太郎さんは、両親の「地域に見守られて育ってほしい」という思いで、家族で練習に参加。「3歳の初舞台で上手に合いの手をいれ、周りを喜ばせた」と、練習の指揮をとる松隈鶴多さん(77)は思い出す。以降毎回参加し、声の響かせ方など工夫を重ねている。祖父、父と共に練習に来た真輝さんは今回が初舞台。「みんなが応援してくれて、舞台に立ってよかった」と喜んだ。

北新地公民館での練習の様子

 「次の盆踊りにも出るよ」「笛も太鼓もできるようになりたい」と、意欲的な姿勢が頼もしい2人。「先生の太鼓は上手で踊りやすいんだ」と目を輝かせる姿から、盆踊りをつなぐ大人への憧れや信頼がみえる。「親について来た子どもも、こうやって自然と継承していく」と松隈さんが目を細めると、真輝さんが「次は一緒に出よう」と母百合子さんを誘い、子どもを通しての伝統の輪の広がりも見られた。

 2人は「参加が増えて、北新地が有名になるといい」と、盆踊りを受け継いでいくことで地域がさらに活性化する未来にも思いをはせた。 (牧野登志江)

(左上から時計回りに)大鶴倫子さん、池之上百合子さん、真輝さん、松隈さん、周太郎さん

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可也校区通学合宿

出会い通じて成長感じ

 2012年から可也校区で始まった通学合宿は、期間中に可也小の子どもたちが自宅を離れ、コミュニティセンターに宿泊し、そこから通学する活動だ。コロナ禍のため、中止が続いていたが、4年ぶりに再開し、2泊3日で25人の子どもたちと43人のボランティアが参加した。

今回取材に協力してくれた皆さん。右下から溝口秀明さん、高園佳奈子さん、
右上から志摩中3年生、花若琴栞さん、牧山光莉さん、尾﨑安喜子さん、田中優愛さん

 通学合宿1期生だという高園佳奈子さん(23)は宿泊補助を担当。「寝相が元気な子がいて、頭を蹴られて目が覚めた」と笑顔で当日を振り返り、「あらためてたくさんの人が関わっていることを実感しました。通学合宿に限らず地域活動で自分にできることがあれば参加したい」と地域への思いを話す。

 今回初めてボランティアに参加した志摩中の3年生たちは、食事作りの補助を担当。「野菜を切るのが初めてだった子が、最後は包丁を使えるようになってうれしかった」と小学生の成長を喜んだ。小学生の時に参加した通学合宿で、世話をしてくれた中学生たちの姿がかっこよくて今回のボランティア参加を決めたと言う。

中学生ボランティアに見守られながらの食事の準備

 通学合宿実行委員長の溝口秀明さん(66)は「通学合宿を経験した人が、こうやってボランティアに参加して、次の世代へつないでくれたらうれしい」と話す。通学合宿をきっかけに出会った異なる年代の、地域の大人、社会人、中学生たちは「小学生は元気いっぱいだったね」と通学合宿の話で盛り上がっていた。 (柳詰紘子)

通学合宿の食事の様子

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「南本町流」山笠

幼児もお年寄りも団結

 昨年7月の前原山笠で、9年に一度の当番町として祭りの準備を担当した南本町行政区。大半が新しい住民で山笠未経験の人も多い中、住民が一丸となって4年ぶりの祭りを盛り上げた。

幼児からお年寄りまで約40人の住民が集まった玉串の準備作業

 祭り2日前の玉串の準備作業に参加した中学1年の松永佳歩さんは「近所の人と話しながらの作業はあっという間。もっとやっていたかったな」とにっこり。山笠当日、小学生らと水遊びをして過ごした待ち時間も含めて楽しい思い出だと話す。

 30人以上の子どもたちが舁(か)き手となった同区の子ども山笠。高校2年の重松里依さんは、途中で転んだり勢い水に驚いたりして泣く子を、さっと抱き上げては励まして歩いた。世話好きな性格から「反射的に体が動いた」とはにかんだ笑顔を見せた。

重松伸幸さん(左)と娘の里依さん、松永佳歩さん(右)

 同区山笠責任者で、里依さんの父親の重松伸幸さん(51)は「今回は中高生の参加が多く、女の子たちも二つ返事で出てくれた」と喜ぶ。行事に関して、重松さんから子どもたちに指示を出すことは特になかったと言い、子どもたちが一住民としてそれぞれの立場で積極的に地域に関わった様子がうかがえた。重松さんは「昔、自分が参加した子ども山笠を世話した方々が今も現役で関わってくれている。このような地域の伝統を子どもたちにもつないでいってほしい」と、子どもたちと地域の未来に期待を込めた。 (榮鮎子)

山笠の途中で泣く子を抱き上げる里依さん

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福吉神幸祭(白山神社 大入地区)

小中学生が主役の大名行列

 江戸後期には既にあったとされる福吉の神幸祭は、五穀豊穣を祈願し、みこしと大名行列が福吉地区の各地の神社と浜の間を往復する伝統行事。このうち二丈福井の大入白山神社では毎年、大入地区に住む小中学生が大名行列に参加する。挟箱(はさみばこ)や長柄傘(ながえがさ)などの道具を持ち、「えいっ」という掛け声とともに、一定のテンポを保ち独特の歩みで進む。昨年10月8日の神幸祭では、一連の動作を覚えるため本番に向けて8人の子どもたちが10日間の練習を積んだ。

大入公民館前の広場で再現された大名行列

 挟箱を担当した小学6年の佐藤虎史朗さんは「ステップを覚えるのが大変」と動きの難しさを話し、同じく挟箱の小学5年の国崎翔さんも「最初は筋肉痛になるくらい道具が重かった」と当時を振り返る。そんな苦労もあったが、2人は「練習していくうちに少しずつ慣れた」「忍耐力がついた」と、練習を通して自身の成長を感じたようだ。

 当日は雨天のため神事のみ執り行われ、神社や公民館で行列の歩みを再現するにとどまった。本来の形で練習の成果が出せなかったが「友達と一緒に最後までやりきれたからよかった」と本番までの練習を重ねた日々に満足している様子だ。

 行列を指導した河角亮太さん(36)は自身も子ども時代に行列を経験し、指導するようになって10年。「教えた子が大人になり、指導の立場になっていく。大入では子どもたちが主役のスタイルなので、長い目で見ると良いことだ」と今後を見据える。

装束の着付けをする河角さん

 人が入れ替わりながらも数百年受け継がれた神幸祭。大名行列を担う子どもたちがいる限り、これからも変わらない姿で続いていくだろう。(朱雀亜唯美)

大名行列に参加した国崎翔さん(左)と佐藤虎史朗さん(右)と指導者の河角亮太さん

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雷山ジュニアリーダー

地元の人が信頼を寄せる

「『こんにちは』とあいさつしたら『おかえり』って言ってくれる。みんな声が大きくて、元気にあいさつする雷山が好き。互いに声を掛け合える、ずっと元気な雷山であってほしい」。地域の人に見守られ成長する、ジュニアリーダーの2人が願う地域の未来だ。

 雷山ジュニアリーダーは現在、高校生5人、中学生2人が、地域活動ボランティアとして小学生のまとめ役となり、通学キャンプや祭りなど大人と一緒に行事を盛り上げる。

雷山文化まつりの準備中リーダー研修生と楽しく輪投げの練習

 役員の山下美幸さん(41)は「子どもの様子をすぐに察知して、自主的に寄り添った声掛けができるし、子どもたちを楽しませるのが上手で、本当に助かっています」と2人に頭を下げる。

 小学生の時に接したジュニアリーダーとの楽しい思い出が憧れとなり、リーダーを志したという2人。山下薫音(ゆきね)さん(15)は「状況に応じた子どもとの接し方を母に相談しています。人と出会い社会経験ができる活動はとても楽しいです」と明るく話し、畑江ひなのさん(13)は「子ども目線で遊ぶことを意識しています。地域の人に子どもをまとめるのが上手いと褒められ、うれしかった」と笑顔を見せる。

スポーツフェスティバルで、子どもたちの前に立って話すジュニアリーダー

 「地域の人も『子どもの対応はジュニアに任せてみたら』と言ってくださるんですよ」と話す山下さんの言葉から、地域の中でのジュニアリーダーへの信頼が感じられた。 (澤野香織)

平原王墓まつりで出店を手伝うジュニアリーダーたち。
左から畑江ひなのさん、山下薫音さん、山下美幸さん、和田直己さん(16)
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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